
返還後20年を迎えた香港、「2017年の香港経済、成長率は6年ぶりの高水準に」、「香港人の7人に1人が百万長者」どというニュース記事も見かけるので、中国が一国二制度の趣旨であるとする「香港の繁栄」は保てているように見えますね。
でも実際、香港に住む人の生活ってどうなの?
自分がもし香港に住んだら?
とお考えの方のため、現場のナマの声、香港に20年近く暮らした私の経験とともにお話しします。
数字で見る香港
香港政府が出している統計(https://www.statistics.gov.hk/pub/B10500142017AN17B0100.pdf)
によると、2017年5月〜6月期の香港人の月収の中位数は16800香港ドルだそうです。
1香港ドルを14円で計算すると23万5千円ぐらいです。
この数字、どう思いますか。
皆さんの月収と比べてどうですか?
これだけもらえれば香港で楽に暮らせるでしょうか?
ところで、ここで使われている「中位数」、政府の公報でも平均を使わずに中位数を使っています。
これは平均月収とは違い、月収の多い人から少ない人まで順番に並べて、ちょうど真ん中に来た人の月収です。
平均ではなく、どうして中位数を使うんでしょうか?
数学の復習も兼ねて、ちょっと考えてみました。
5人の子供がいて、その子供のお小遣いを多い順に並べたら、
300円、200円、200円、150円、150円 になったとします。
その平均は1000円÷5人で、200円。
中位数は、真ん中の子供で、これも200円。
でも、大金持ちの子供が1人いて、その子のお小遣いが1万円だとすると、
10000円、200円、200円、150円、150円で、
平均が10700円÷5人、なんと2140円になってしまいます。
子供の小遣いではありませんが、香港人の収入もこんな状態だから中位数を使っているんじゃないかと勘ぐるのは私だけでしょうか。
香港の大金持ちたち
アメリカの経済雑誌フォーブスの発表によると、香港の長者番付トップ50人の総資産の合計はUS$307billionで、2017年からUS$60billionの上昇だったそうです。
Billionって言われても全然ピンときませんが、US$307billionは約34.1兆円、ちなみに日本の上位50人の資産総額は約19.5兆円です。
第1位の李嘉誠さんの資産は約3.8兆円、日本の一位、孫正義さんの約2.8兆円に大きく水をあけています。
香港の百万長者
広東語の「百萬富翁」は、日本語の百万長者と同じで、お金持ちを表す言葉です。
今は千萬富翁を使う人が多いのは日本と同じ。
先の頭條日報の記事を詳しく見てみましょう。
シティバンクが香港の在住の21歳〜79歳の4139人に電話で行ったアンケートで、持ち家などの固定資産を除いた流動資産が100万香港ドル(約1400万円)を超える人は100万人以上で、香港に住む人の7人に1人が百万長者、資産が1000万香港ドルを超える億万長者も6万8千人に登っている。(筆者翻訳)
日本はどうでしょうか?ネットにはこんな記事がありました(4)。
一人暮らしの30代は6人に1人、40代は4.5人に1人が貯蓄1000万円以上。
二世帯以上世帯は30代は9人に1人、40代は5人に1人が貯蓄1000万円以上。
また億万長者に関しても、香港の千萬富翁(約1億4千万円)は34人に1人で、全体の2.9%、日本の億万長者の割合2.3%を少し上回ります。
香港が1400万円と1億4千万円で日本が1000万円と1億円なので、比較はできませんが、香港の方がちょっとお金持ちと言えるような気がしますね。
で、もうちょっとわかりやすい記事を探したら出てきました。
中国のシンクタンク胡潤研究院のレポートによると、世界中の都市の中でbillionaire(資産総額10億USドル以上の人)の数が多いのは、北京が131人で世界一。
次がニューヨークの92人、香港は80人で堂々の第3位。
東京は31人の第13位。
うん、やっぱり香港の方が日本よりお金持ちの数は多いですね。
香港に住む人の声
香港に住んでいる人は自分の生活について、どう思っているのか、聞いてみました。
Cさんは香港人、母語である広東語のほか、普通語、英語、日本語、フランス語を自由に操る才女。
今は専業主婦として悠々自適の生活をしているように見受けますが、彼女は香港人の暮らしが豊かなんて全然思わないと言います。
注:下の斜体字は引用ではありませんが、会話なので、それとわかるように入力してください。)
お金持ち?物価はどんどん上がってるのに、給料は全然上がらない、うちはまだ持ち家があるからいい方だけど、家賃を払っていかなきゃならない人はホント悲惨よ。
知り合いの外国人だって、生活が苦しくて、帰国したり、シンガポールに引っ越したりする人が増えてるわよ。
どっちにしても外国人や香港人の若い子はまだマシ。
気に入らなかったら、台湾でも東京でも働き先を探して引っ越せばいいから。
私みたいに引退しちゃったら、労働ビザをとって移民することもできないし、私たちよりもうちょっと上の年代だと、中山(中国広東省の中山市)に引っ越した人もいるわよ。
深圳の物価はもう香港並みだから全然ムリ。
不動産の値段がこの2、3年で倍になったから、不動産を持ってる人はみんな千萬富翁だけど、そんなのは持ち家だけしか持ってない人にとっては、全然意味なし、数字の遊びよ。
不動産が上がって喜ぶのは、それを投資として持ってる人だけ、不動産が上がったら、家賃も上がる。
うちを借りてる人の生活は苦しくなるだけ!
うーん、そうですか。
経済成長で、お金持ちはどんどんお金を増やす。
でも、一般庶民は何の恩恵を受けられないのは香港も同じなんですね。
広まる貧富の差
香港に行ったことがある人は、香港を走っている車の多くがベンツやBMW、テスラなどの高級車だということに気づいたと思います。
でも、同様にリヤカーを引いて段ボールを集めている人や、物乞い、貧しい身なりをした人が多いことにも気づいたはずです。
実際に香港の普通の家を見たことがない人は多いと思いますが、3畳ほどの家というか、部屋に夫婦2人で住んでいたり、ひどい人になると二段ベットの一段だけが自分の家という人もいます。
どんな状況か想像できない人は、イギリスのDailyMailオンラインのこの記事やナショナルジオグラフィックのこの記事を見てみてください。
貧富の格差、感じずには入られませんよね。
まとめ、香港に住むということ
いかがでしたか、超大金持ちが多く、その大金持ちの収入や資産が、香港人全体の収入や、資産の数字を上げているだけで、実際に、普通の香港人は生活が豊かだとは感じていないようです。
また貧富の格差も拡大しています。
日本で最近話題になった「下流老人」という言葉、私は大嫌いなんですが、香港には本当に「上流」も「下流」もあります。
香港に住む日本人もそのとおりで、上から下まで、あらゆる階層の人がいらっしゃいます。
投資に成功して香港の高級レストラン食べ歩き記事を書いていらっしゃるブロガーさん。派遣され、家賃150万円ぐらいの家に住んでいる駐在員さん。また現地採用で、香港人の家の一部屋を借り、食費は1日30ドルと決めている若者。
私は間違いなく、最後のタイプでした。
最初に借りた部屋はトイレがシャワー(わかりにくいですね。すみません。つまりトイレの壁にシャワーヘッドがついていて、便器に座ってシャワーを浴びる)で、ベットはどこからか拾ってきたと思われるマッサージ台(うつ伏せになったとき、顔がスッポリハマる穴がある)でした。
次に移ったところはフィリピン人の家政婦や、コールガールさんがルームメイト、台所はなく、料理はカセットコンロ、食器はトイレの洗面器で洗っていました。
でも、私にとって香港はそんな生活をしてでも住みたい魅力がある街でした。
それは、下流だろうが上流だろうが、そんなレッテルは何の意味もない自由さ。
何もかも理路整然したルールで誰もが気持ちよく暮らせる街を目指すシンガポールとは好対照の街です。
また、今回は書きませんでしたが、香港の経済自由度指数は、24年間連続世界一で、投資や起業を考えている人にはものすごく魅力がある街でもあります。
アナタは魅力を感じますか?
返還20年を過ぎても、その自由さはまだ残っているように思えます。
次は2047年、香港が完全に中国になるまでには、もう少し時間があります。
香港が香港であるうちに住んでみませんか?