香港大気

中国では大気汚染が深刻な問題となっています。

日本にもPM2.5の問題が取り上げられています。

香港の空気はどうなのでしょうか?

2019年現在の状況を詳しく、掘り下げてみてみましょう。

花粉症の人には楽園の街、香港

花粉症の人には楽園の街、香港
春先、花粉症に悩まされている日本人の方々は多いですよね?

香港在住の日本人で、そのころになると「花粉のない香港に住んでてホント良かった!」と話す人を時々見かけます。

が、実際はどうなのでしょうか?

実は花粉以上に、目や鼻や口を不調にしている要素が、香港の大気中にないとも限りません。

今回はそんな、香港における、大気汚染の実情を調査したいと思います。

また、香港では人口密度も問題視されています。詳しくは以下の記事も合わせて確認してみて下さいね。

花粉が飛ばない街なのに、喉や眼には影響が

香港に住んでいると、確かに花粉症の症状で季節の到来を感じる、というようなことはなくなります

しかし、同じような春先の時期(1月中旬~3月ぐらい)靄が街全体に低く垂れこめ、空全体が低い雲に覆われる時期、その低い雲を蓋にした中に大気が閉じ込められ、なんとなく痰が絡まりやすくなったり、眼がショボショボしたりする日が増えます。

これは単純に「霧が多い季節」という、気候の変化による目や喉の変調というよりは、大気が淀んでいる影響からかな?などと、うっすら感じたりします。

香港の大気汚染はどこから?

実際、香港の大気汚染はどのような感じなのか、その分布図がThe World Air
Quality Projectからリリースされています。


出典 : https://aqicn.org/map/hongkong/jp/#@g/22.3548/114.1498/12z

この図から見て取れるのは、香港島の銅鑼湾付近の大気汚染指数が最も高く、その指数値は香港内でトップの数値を示しています。

ひと昔前ならば「香港の大気汚染は中国(深セン)からの工場排気の所為だ」と言われていました。

深セン
出典 : https://commons.wikimedia.org/wiki/Main_Page

しかし今現在、実際に深センの工業地帯の汚染数値を見てみると、もっとも高い深センの中心地でなんとか銅鑼湾を上回ったり下回ったりとを繰り返している数値を示していますが、その一番高い深センの中心地から離れ、一歩香港に踏み入ると、新界や九龍側はグンと数値が落ちつきます。

そしてまた銅鑼湾まで行くと、そこだけグンと数値が突出しているのがわかります。


出典 : https://aqicn.org/map/hongkong/jp/#@g/22.4344/114.1565/11z

世界的エコロジーの風潮から、深センの工業地帯でも、工業排気には十分に配慮をするように時代が変わってきた所為もありますが、今現状では、昔よりも中国大陸からの工業排気による汚染の影響が、香港の大気汚染に大きくかかわる、ということもそれほどではないようです。

銅鑼湾に見る香港大気汚染の現状

ならばなぜ、銅鑼湾の大気汚染指数はこんなに高いのでしょうか。

これは銅鑼湾という場所に注目してみたいです。

銅鑼湾はご存知のように人があふれかえる街です。

人は、消費を求め、歓楽を求め、仲間との集いを求め、銅鑼湾に集まります。

中環や金鐘といったビジネス・仕事の街から、住宅地である北角や太古を結ぶ中間地点であり、歓楽地である銅鑼湾は、必然的に車・特にタクシーやダブルデッカー、そしてバンで荷物を運ぶ運送屋の交通量は、香港屈指の多さであることは誰も否定しないでしょう。

そのような、車による排気ガス。

それが香港内における大気汚染の諸悪の根源という見方が最も正しいでしょう。

香港内を走る車両の今

銅鑼湾を横断するヘネシー道や、尖沙咀を起点とするネーザン道をとめどなく走るダブルデッカー。

これは香港名物の風景でもありながら、それらの車両が走り去った後の、真っ黒黒の排気ガスに思わず口元を覆った経験のある人も少なからずいるのではないでしょうか。

最近は、天然ガスを燃料としているバスも増えてきていますが、LPガスやディーゼルエンジンを用いたバスがまだまだ主流です。

LPガスはクリーンとはいえ、不純物も多く、排気ガスがクリーンとはいいがたい存在です。

また、香港的士(タクシー)は、日本で長年タクシーとして使われていた車両の払い下げで、第二の人生を香港で送っているような車両が一般的で、日本のタクシーと同じくLPガスを燃料としている場合が多いようです。

日本で運用されているタクシーならば(そもそも最近はハイブリッド車などクリーンな車両を使用しているタクシー会社も多いですが)、過剰なまでの整備と車両美化に心がけている業者さんが一般的なため、常にエンジンやその他、排気ガスが必要以上に汚れて排出されるなんてことは起こりにくいですよね。

ところが、香港のタクシーは、基本的に個人経営者がやっていますので、日本ほど厳しくない車両整備基準の下、日本のタクシー会社が熱心に取り組んでいるほど完璧な整備も行われません。

しかも、かの悪名高き乱暴運転で日々消耗させられています。

おまけに、日本で使い古された中古車両という前提もありますので、最初からエンジンも老朽化しており、排気ガスにクリーンな状態を期待する方が間違っています。

また、ダブルデッカーが行き届かぬ細かい地域まで人々を運ぶ便利な交通手段・ミニバスも、最近は最新型の静かでクリーンな車両がちらちら散見できますが、依然その大多数は、何十年も使い古された旧車両で運行されています。特に赤バス。

物流車も問題視されています

人を運ぶ公共交通機関もさることながら、中国大陸との間を行きかう大型トラックの大罪も認めざるを得ません。

香港は古くから貿易の街として栄えているのは皆さんよくご存じのことと思いますが、中国が世界の製造工場と化している今、深センの工業地帯で生産されたものは、香港から出向される場合も多く、また逆に、香港で荷受けされた工業原料などが深センまで運ばれるという場合も多くあります。

一般消費商材に関しても、在港の業者が海外から輸入をし、中国本土の消費者のために運んだりする場合も多くあります。

香港はフリーポートであり、利点が沢山あるために、周辺の中国の港よりも物流の量が必然的に高くなります。

が、そのほとんどは中国本土へ運ぶための荷物なのです。

そのような背景があり、荃灣周辺のポートで降ろされた荷物は、コンテナのまま中国大陸の方へ運ばれていきます。巨大トラックの後ろに載せて。

それらのトラックは、ダブルナンバーの香港と中国大陸の両方を走ることができる大型トラックになります。

毎日長距離を走り、酷使されているトラックの燃料は、ディーゼル燃料の場合が多いです。

中国大陸での大型トラックは、いまだディーゼル車両が主流であるからです。

ディーゼル車はご存知のように、排気ガスの中に含まれる浮遊粒子状物質は、スモッグの原因となる最たるものです。

また一方で、香港島内や、九龍地域の街中をくまなく走る小型配達車。

これは大型トラックではなく、バンであることが多いですが、これらもディーゼル車両が使用されている場合があり、いまだに排気ガスをモクモクとまき散らして港内を走り回っているものも多く目にします。

他にも、ミネラルウォーターを運ぶトラックや、ビルの改修などに使う竹竿を運ぶトラック、といった大型車も、古いディーゼル車を利用している場合が間々ある香港。

トラック
出典 : https://ameblo.jp/howdynookery/

生活の中で必要不可欠の「働く車両たち」ですが、どれもこれも、香港の空気を汚す一因をなしていることは、否定する余地がありません。

意外と知られていない香港の高放射線量

また、香港内の放射線量の数値が意外と高いことは、案外知られていません。

香港内に原子力発電所などはないのですが、お隣、深センには原子力発電所があります。

大亜湾原子力発電所・嶺澳原子力発電所という発電所です。

原発
出典 : https://ene-fro.com/article/ef06_a1/

大亜湾原子力発電所は2010年やら2016年やらと、放射能漏洩事故を度々起こしています。

香港からわずか数十キロしか離れていない場所で、です。

地図
出典 : https://www.weather.gov.hk/

そのことが原因なのかは不明ですが、香港内の放射線量は常に一定水準で、至って高い位置をキープしています。

その数値は、「香港天文台の放射線量のモニターページ」からリアルタイムで知ることができます。

こちらの数値は一刻一刻と変化しますが、常にその放射線量の平均値は日本の標準値よりも高く、これを執筆している2019年5月の終わり現在で、福島県の郡山市と同等か、それ以上のレベルの放射線量を示しています。

「(比較のため郡山市の数値)」

このように、大気汚染指数(空気質指数)が高いだけではなく、目には見えない放射能という大気汚染も香港では深刻となっているのです。

まとめ

1990年代を境に、中国の工業地帯から排出された汚染物質による大気汚染の影響は年々少なくなってきたものの、車の排出ガスによる大気汚染が、まだまだ根深い問題として残っている香港の市街地なのでした。

また、中国から流れ着いた放射能の影響、こちらも港内では懸念される要素であることは否めません。

香港が、少しダーティで灰色な街並みであることは、ある意味魅力的な面の一つではあるのですが、香港に住まう人々の健康被害が及ばない程度に、これ以上汚染が進まないことを心から願うばかりです。

原発問題も、日本での原発事故以降世界中で見直されているという流れがありますので、深センの原発も、先々はどうなるかわかりませんが、香港の人々の健康被害につながらないようにと心から望んでいます。

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